ソクラテス以前

ソクラテス以前の哲学は主にイオリアや南イタリアなどのギリシア周辺地域で発展しました。この時代の哲学的対象は自然であり、これを自然哲学と呼びます。

 

「万物の原理は水である」

アリストテレスによると、最初に哲学を始めた人物はタレスであると言われています。その哲学とは「万物の原理は水である」というものです。なぜこれが最初の哲学なのでしょうか。その最も大きな意味はミュトスからロゴスへ転換です。つまり、世界を説明するために、神話・伝説(ミュトス)を用いるのではなく、理性(ロゴス)による方法を最初に試みたのがタレスなのです。

その後、アナクシマンドロスは万物の原理を無限定なもの(ト・アペイロン)であると主張しました。火や水といった元素ではそれらがたがいに打ちし合って、世界は成立しないと考えたのです。また、アナクシメナスはこれを空気であるとします。

これらの人々はミトレス学派と呼ばれています。彼らは元素としての自然にアルケー(もとのもの、原理)を求めたのであり、その自然は自らのうちに運動の原理をもっています。たとえば、ト・アペイロンは、永遠の運動によって冷たいものと温かいものとが分離され、それらが大地や天体を生み出します。また、アナクシメナスのいう空気は、希薄化・濃縮化によって風や火を作り出すのです。

それに対してピュタゴラス派の人々は、その原理は数であるとします。世界のすべてのものは数に還元でき、数学にみられる比によって調和が保たれるというのが、彼らの考えです。

 

ヘラクレイトス

彼は「万物は流転する(パンタ・レイ)」という言葉で知られています。すべては絶え間ない変化の流れの中にあり、「我々は二度と同じ川に入ることはできない」のです。この世は、何かが「ある」というわけなのではなく、常に何かが「なる」ことによって成立しています。そうした流れは、生と死、昼と夜といった対立を生みますが、「ことのなりたちは、隠れることを好む」と彼自身が語っているように、その背後には調和が隠されています。その調和にこそ共通のロゴス(理)を求めるべきだというのがヘラクレイトスの主張です。

 

エレア派

クセノパセスはホメロスやヘシオドスにみられる神々の姿に疑問を投げかけました。ギリシア神話の神々は、盗んだり、だましたり、姦通したりするわけですが、ホメロスたちは人間のあらゆる不正を神に帰したという点で批判されます。さらにクセノパセスは、牛や馬のつくりあげる神々はやはり牛や馬の姿をしているだろうとし、神を人間の尺度によって測ることに反対しました。ただし、彼の構想は存在論的ではないため、エレア派ではないとする学者もいます。その存在論を明確に提示した人物としてパルメニデスが挙げられます。

パルメニデスは、「あるものはあり、あらぬものはあらぬ」と主張します。「あらぬ」ということが語られうるものとするならば、それは語られるような何かが「ある」、ということになります。そうすると、「あらぬ」ものは「ある」、という自己矛盾を起こしてしまうのです。 ヘラクレイトスは、常に「なる」によって成立している世界において、「ある」という状態を想定しないわけですが、このような生成の原理は否定されます。さらに、「ある」ということは語られうるということなのだから、それは思惟することと同じであるとパルメニデスは説きます。つまり、「ある」ことを追求すすことによってしか、哲学は成立しないのです。

パルメニデスの弟子ゼノンは、有名なアキレスと亀のパラドックスなどの議論を用いて、多や場所や運動の存在を否定し、パルメニデスの説を裏づけようとしました。ゼノンの議論は、相手の主張を一度仮定とし、そこから不合理で矛盾した帰結を導き出す、という方法であり、アリストテレスは弁証法の創始者にゼノンの名をあげています。

 

ソフィスト

ソフィストとはもともとは知恵ある者という意味です。これが詭弁家として悪名高いものとなるのは、後期ソフィストたちの堕落が原因です。さて、やはりソフィストとして最も有名なのはプロタゴラスでしょう。彼は「人間は万物の尺度である。あるものについてはあるということの、ないものについてはないということの」という言葉でよく知られています。これは人間尺度説と呼ばれています。普遍的な真理を否定し、各人のそれぞれの尺度によって事物は認識されるのです。
また、ゴルギアスは何ものも存在しない、存在したとしても人間には認識できない、たとえ認識されてもそれを他人に伝えることはできない、と述べています。
このようにソフィストたちの考えは相対主義、懐疑論に基づいており、絶対的な真理を否定します。彼らの主張はソクラテスやプラトンによって、大きく瓦解することとなります。

 

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