ヴィトゲンシュタイン

ヴィトゲンシュタインはオーストリアに生まれ、科学者を志します。しかしケンブリッジでラッセルに学び、哲学へとその研究の道を転じます。彼は初期において『論理哲学論考』を発表し、論理実証主義に大きな影響を与えました。その後オーストリアの小学校教員として数年を過ごしますが、直観主義の数学者ブロウエルの講演を機に哲学への営みを再開します。ヴィトゲンシュタインの死後出版された『哲学探究』では、前期の自らの哲学を批判し、言語現象の分野に新たな視点を導入しました。

 

『論理哲学論考』

ヴィトゲンシュタインは、論理的に互いに独立でこれ以上分割されないような命題を要素命題と呼びます。複合命題は真あるいは偽の値を示す要素命題の組み合わせによって表わされ、これを真理関数と呼びます。そしてそれらは、要素命題のあらゆる可能性に対しても常に真であるような恒真命題(トートロジー)、常に偽であるような恒偽命題、そしてそのいずれでもない命題の三つに分かれます。論理学や数学の真なる命題はすべてトートロジーであると言えます。ヴィトゲンシュタインは「真なる命題の総体が自然科学の総体である」と述べています。

そしてヴィトゲンシュタインは「哲学的な事柄についてこれまで書かれてきた命題や問は概ね、偽ではなく無意味なのである」とします。論理学や数学はこの現実世界については何も語らず、真正の命題は可能的な世界を描写するものに他ならないことから、「命題を理解することは、命題が真である場合には、何が生じているか知ること」なのです。その点において、命題は意味があるのであって、『論理哲学論考』は「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」という言葉で終わっています。

 

言語ゲーム

後期ヴィトゲンシュタインは、前期の彼の哲学とは対極をなします。すべての言語表現に適用可能である命題の一般形式、つまり先に述べたような命題の有意味性の条件といったものは存在しえないと考えた彼は、言語現象を理解するための分析装置として言語ゲームを考え出します。言語ゲームとは言語現象を一定のルールによって行われるゲームとみなし、そのモデルを構築しようという試みです。言語ゲームにおいてはすべてのゲームに共通な性質は存在せず、「重なり合い、交差する複雑なネットワークが、ときには全体的な類似性を、ときには細部における類似性をもつ」のです。ヴィトゲンシュタインはこの類似性を属的類似と呼びます。そうした属的類似の中でこそ言語表現は特徴づけることができるのです。

このようにヴィトゲンシュタインは、前期においては命題の一般形式を探究することで哲学の領域を示し、そして後期においては言語ゲームを用いることで言語の多様性と類似性とを明らかにしました。特に前者は論理実証主義に、後者は日常言語学派に、それぞれ多大なる影響を与えました。

 

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